研究概要 |
平成20年度は,関西女子短期大学付属幼稚園にて幼稚園児を対象とした行動実験を二度行った.一度目は,5月〜6月に実施し,56名の5歳児のデータを得た.課題として,行動ゲーム理論で頻繁に用いられている最後通告ゲームと心の理論の有無を判定する誤信念課題(サリー・アン課題)を用い,心の理論の有無が,最後通告ゲームでの分配行動にどのような影響を与えるかを検討した.その結果,心の理論を獲得している子供は,そうでない子供に比べて資源分配状況において資源をより公平に分けることが明らかになった.この結果は,心の理論を有している子供は,資源を独り占めしてしまうと他者からネガティブな評価を受ける,また,他者はネガティブな感情を喚起するだろうと推測することで公平な分配をしたと解釈することができる. 第二実験として3月に32名の3歳児を対象とし,第一実験の追加実験を行った.その結果は,第一実験の結果を支持するものであった.また第二実験では,不公平な分配をされた他者がどのような感情を喚起するかを子供に尋ねる課題を行った.その結果,心の理論を有している子供は,不公平な分配をされた他者は怒るだろうと推測する傾向があることが示唆された.人間社会は,他の生物と比較して非常に協力的である.本研究の結果は,協力的な社会の維持に,心の理論という人間において高度に発達している認知能力が重要な役割を果たしていることを示唆している.
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