研究概要 |
本研究は、4世紀後半から5世紀前半という、ローマ帝国が東西への分裂を経験する時代において、その統治構造の維持及び国家の存続のための不可欠の構造体として機能した官僚制を研究の対象とするものである。本年度は予定通り、まずは官僚ルフィヌスについての研究成果の一部を、第76回西洋史読書会大会(2008年11,月3日、京都大学)において口頭で報告を行ない、また論文としてまとめた(2009年に刊行予定)。続いて、以上の成果を批判的に検討するために、2008年9月にロンドン大学古典学研究所において文献調査・資料収集を行なった上で、ルフィヌス歿後のローマ帝国東部宮廷を牛耳った宦官エウトロピウスについて考察を進めた。その結果、宦官エウトロピウスに関する学説史は、大別して、クラウディウス・クラウディアヌスの『エウトロピウス弾劾詩』を対象とする文学研究及び宦官研究によって形成されてきたが、20世紀前半の後期ローマ帝国史研究のなかで問題とされたエウトロピウスの行なった具体的政策については、近年ほとんど取り上げられなくなっていることが明らかとなった。本年度はこの点に着目し、エウトロピウスの行政改革を取り上げて、その内容と意義に関して考察した。その成果の一部については、第7回古代史研究会大会(2008年12月7日、京都大学)において口頭で報告を行なった。また本年度は、本研究が対象とする時代の皇帝である「背教者」ユリアヌス及びキリスト教詩人プルデンティウスに関する最新の研究文献の紹介・書評を、それぞれ『史林』91巻4号(2008年)及び『西洋古代史研究』8号(同)に掲載することが出来た。
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