研究概要 |
平成21年度の研究成果より、モデル植物のアカシアとユーカリにおいて葉のLMA (Leaf mass per area,比葉重)とメタン放出速度との間に負の相関が認められたことを受け、平成22年度は、野外環境でCO_2付加を行うことができるFACE (Free Air CO_2 Enrichment)において、これまで育成した冷温帯落葉樹14種について、高CO_2による葉のLMAの変化を解析した。その結果、ハルニレにおいて高CO_2による有意なLMAの低下が認められた。一方で人工気象室を用いて、貧栄養環境で育成したグイマツ雑種F1(グイマツとニホンカラマツの優良交雑種)では、高CO_2環境において顕著なLMAの増加が認められた。以上の結果より、将来予想される高CO_2に伴うLMAの変化を通して、将来環境における葉からの好気的メタンの放出量が変化するが、それには樹種間差異がある可能性が示唆される。 一方で、本研究では森林生態系におけるメタン収支の総合的な評価を最終的な目標としている。そこで、土壌におけるメタン吸収に対する高CO_2付加の影響もFACEにおいて評価した。その結果、高CO_2環境では土壌のメタン吸収量が低下し、状況によっては放出に転じることも明らかになった。したがって、将来の高CO_2環境における冷温帯林におけるメタン収支を評価する際、LMAの変化に見られる樹木葉からのメタン放出量の変化と同時に、土壌におけるメタン吸収量の変化も考慮する必要がある事が明らかになった。これまでに行った樹木葉および土壌におけるメタン収支に関して、国際シンポジウムでの招待講演を行い、その内容は図書として出版予定である。
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