本研究の目的は、木質バイオマスの熱化学変換プロセスにおいて重要な反応の一つである、セルロースの熱分解によるレボグルコサンの生成機構を解明することである。平成20年度は、メチルb-D-グルコシドをセルロースのモデルとして採用し、メチルb-D-グルコシドからのレボグルコサン生成機構を検討した。レボグルコサン生成機構としては、以前よりラジカル機構とイオン機構の二種類が提案されていたが、実験的検討の困難さから、いずれが正しいのか明らかでなかった。本研究では、世界に先駆けて、理論計算を用いたレボグルコサン生成機構の解明に取り組み、イオン機構による反応の進行を明らかにした。なお、本結果は米国化学会のThe Journal of Organic Chemistry誌に投稿中である。次に、実際のセルロースの場合でも、同様の機構で反応が進行することを、セルロース2量体を用いた検討より確認した。さらに、高分子量のセルロース分子からのレボグルコサン生成機構について検討するため、複数の反応部位を有するセルロース6量体からのレボグルコサン反応についても検討した。その結果、中間ユニットが末端ユニットより反応が進行しやすいという、セルロースの熱分解機構を理解する上で重要な知見を得ることができた。
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