研究概要 |
電解質は,その添加により気泡の合体を抑制する効果があり,気泡流の流動構造を劇的に変化させる重要な要因として知られている.このような流動構造の変化を理解するには,電解質の添加がもたらすミクロスケールの現象が,気泡間の合体・反発や大域的な流動構造といった流体力学的な現象とどのように相互干渉しているかを明らかにすることが重要である. ある種類の電解質溶液中では,気泡間の合体が大幅に抑制されることが明らかとなっているが,これまでの研究は定性的な評価に留まっており,合体抑制メカニズムの詳細については明らかになっていない.本研究では,高精度な気泡径制御が可能な気泡発生装置を用い,電解溶液中のイオン濃度やイオンの種類,さらに気泡径を様々に変化させたときの気泡の合体・反発条件を実験的に調査した. 本実験では,超純水,塩化ナトリウム,塩化カリウム水溶液中における気泡と自由表面との合体・反発を実験的に観察した.塩化ナトリウムの添加により,気泡と自由表面との最大反発回数は顕著に増加した.このことから,電解質の添加により気泡間の合体が抑制されることが示された.また,気泡と自由表面との合体・反発の境界は気泡前方の曲率半径,接近速度を用いたウェーバー数で整理でき,水溶液の濃度の増加とともに,合体・反発の境界となる臨界ウェーバー数は減少することが明らかとなった.これは,電解質の添加による効果がウェーバー数という流体力学的なパラメータによって整理できる,すなわち衝突直前の流体力学的メカニズムが重要であることを表しており,電解質の添加が気泡の合体におよぼす影響を考察する上で重要な知見である.
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