研究課題
ケルコゾアは多種多様な原生生物よりなる真核生物内の一巨大生物群である。これまでの研究から未だ多くのケルコゾア生物が未発見のまま残されている事が明らかになっており、この巨大生物群の真の多様性を明らかにするためにはそれらの未発見生物を対象にした研究が欠かせない。このケルコゾア内のブラックボックス解明に向け、昨年度は高次レベルの新規ケルコゾア生物を含む10培養株の確立に成功した。これらの新規培養株はSSU rDNAを用いた分子系統解析と光学顕微鏡レベルの観察を既に行っており、今後電子顕微鏡等による詳細な観察と系統的位置の厳密な推定を行う予定である。これまでに確立した培養株であるYPF502株の生活環、系統的位置を観察した結果、新属Filoretaに含まれる新種F.japonicaとして扱うのが妥当であると結論しこの内容がPROTISTに掲載された。この研究によりケルコゾア内に新たな裸アメーバの系統が存在する事が明らかになった。新規ナノサイズクロララクニオン藻RCC365株の記載論文において連結遺伝子解析を用いた系統的位置の推定を担当しこの成果を含めた論文がPROTISTに掲載された。これによってクロララクニオン藻の系統関係が従来よりも整理されたと共に、SSU rDNAに加えてLSU rDNAをクロララクニオン藻における分子系統解析のツールとして確立した。これまでに確立した培養株であるYPF610株の詳細な電子顕微鏡観察を行った。SSU rDNAによる解析からケルコゾア内の新規系統である事が示唆されていた本株が形態的にCryothecomonasに類似している事が明らかになり、Cryothecomonasを含む分類群であるThecofiloseaがこれまで認識されているよりもケルコゾア内で大きなグループを形成する事が示唆された。現在、成果を投稿すべく準備中である。
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PROTIST 160
ページ: 75-109
ページ: 137-150