研究課題
ケルコゾアは多様な原生生物よりなる巨大生物群である。これまでの研究から多くの未発見ケルコゾア生物の存在が知られており、この生物群の真の多様性の解明ためにはそれらの未発見生物を対象にした研究が欠かせない。昨年度は新規ケルコゾア生物を含む多数の培養株の確立とこれまでに確立した培養株を用いた分子系統解析、形態観察を行った。以下にその成果の一部(経過)を示す。YPF804株は糸状仮足を持つアメーバ状細胞が栄養細胞であり、培養期間が進むと球状のシスト様細胞が現れる事が明らかとなった。さらに透過型電子顕微鏡観察・蛍光抗体染色観察を行った結果、球状細胞のみ細胞膜に密着する鞭毛が存在する事が確認された。この様な特徴を持つケルコゾア生物はこれまでに報告が無く新たなメンバーである事が強く示唆された。次いで分子系統解析を行った結果、環境配列を含めこれまでに全く報告のされていなかった新規系統である事が明らかになった。これらの結果から、YPF804株はこれまで認識されていなかった高次新規ケルコゾア生物であり、新属新種であり新綱のメンバーとして扱うのが妥当であるとの結論を得た。YPF808株は4本鞭毛を有するアメーバ鞭毛虫であり、その形態的特徴からこれまで所属不明原生生物として扱われてきたQuadricilia sp.であると同定された。SSU rDNAによる系統的位置の推定を行った結果、Quadricilia sp.はこれまで環境配列のみで認識されていたNovel Clade2と呼ばれるケルコゾア群のメンバーである事が明らかとなった。現在、形態観察を行っている。
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