研究課題
ハンナ・アーレントの初期著作が、その後の著作に重要な影響を与えていることを論証するため、中期著作『全体主義の起源』の解釈を行った。その結果、『ラーエル・ファルンハーゲン』における研究成果を基礎に置き、「実存」と「人権」というキータームをもって発展させたものが、『全体主義の起源』の一部を担っていることが証明された。従来の研究では「人権」のみ重視されていたが、個人の「実存」の重要性を訴える貴重な契機となった。この成果を中国で開催された国際学会、東アジア法哲学会において発表することで、より現実に即した問題状況の中で、アーレントの思想を考える重要な機会を得ることができた。また、当該年度においては、アーレントの博士論文『アウグスティヌスの愛の概念』についての思想史的意義について考証した。これにより、1920年代から1930年代へのアーレントの思想を追う中で、他者存在の重要性と公的空間へとその思想を発展させざるをえなかった必然性を見出すことが可能となった。これは、アーレントが「哲学」から「政治」へと重心を移した最大の契機となっており、アーレントの思想研究において、それまで指摘されえなかった非常に重大なポイントである。この研究結果をまとめ、北海道哲学会において発表することで、より広い観点からの意見交流を行うことができた。上述してきた研究成果を、更に全国学会で他のアーレント研究者と意見交流をはかることで、発展させ、アーレントの思想における「他者存在」と「政治的公共空間」とがどのようにその思想の中核となっていったかを明確化した。これを書籍に掲載することで、意見交流が容易となり、次年度以降の研究に資すると考える。
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東亜法哲学大会 第7巻(印刷中)
公共空間における個の自律-今井弘道先生退職記念論集-(風行社)
ページ: 2241-271
http://eastasia.legaltheory.com.cn/index.html
http://eastasia.legaltheory.com.cn/final%20agenda.pdf