いくつかの原生生物において、捕食した藻類を短期間細胞内に保持し、一時的な葉緑体として使うことが知られている。この一時的な葉緑体のことを盗葉緑体と呼ぶ。この盗葉緑体を持つ状態は葉緑体獲得へ至る中間段階であると考えられており、盗葉緑体を持つ生物を研究することは細胞内共生による葉緑体獲得過程を理解する上で重要である。私は盗葉緑体を持つ無殻渦鞭毛藻Amphidinium sp.を研究対象にその共生体の起源を解明するとともに、分類がきちんとされていないAmphdinium sp.共生体であるクリプト藻Chroomonas属/Hemiselmis属の分類学的研究を行うことにした。 本年度は、1.クリプト藻Chroomonas属藻類の系統分類学的研究を行い、Chroomonas属/Hemiselmis属の分子系統解析をし、その分類体系を検討した結果、Chroomonas属/Hemiselmis属藻類すべてをChroomonas属に所属させ、属内でさらに7つの亜属にわけるのが妥当であるとの結論を得た。また、2.渦鞭毛藻Amphidinim sp.の新種記載の論文執筆をした。分子系統解析や外部形態の情報を元に、本種はAmphdinium属ではなく、Gymnodinium属の新種とすることが妥当だと考えられ、G.myriopyrenoidesと命名した。論文の中で、本種と同様に盗葉緑体を持つ種の宿主と共生体の共生段階を比較し、その共生段階に更なるバラエティーがあることを示した。さらに3.クリブト藻Chroomonas属/Hemiselmis属藻類の系統分類に関する論文執筆に取りかかったが、これに関しては追加でHemiselmis属藻類の微細構造データを取りつつ進める必要がある。
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