研究課題
今年度は、以下の3つの分析課題に取り組んだ。第一に、不登校経験者を積極的に受け入れる後期中等教育の学校2校においてフィールド調査を継続し、不登校経験者に登校継続・進路展望の形成をもたらす要因と今後の課題について検討した。不登校経験者が語る「学校に通える理由」には教師と友人に関するものが多く、それをふまえて上記2校では、(1)手厚い教師のサポート、(2)「痛み」を共有する生徒集団、(3)生徒間の関係に対する教師・学校側の介入/コーディネートという3つの実践・要因が有効に機能していることが見出せた。進路形成状況については、専門教育との関連から現在も分析を継続している。第二に、多様な後期中等教育の全体像と傾向について文献や学校ホームページを収集し、また上記2校のフィールド調査の知見をふまえて、不登校経験者の中学校卒業後の進路選択状況について社会的公正の観点から検討した。日本には全日制高校以外にも多様な後期中等教育段階の学校/教育施設があり、不登校経験者はそれらの"非主流"な学校/教育施設と深く結びついているが、学費と知名度の問題で各家庭に入学機会が平等に与えられているとはいえず、社会的公正の点で問題があることが見出せた。第三に、比較対象となるはずの一般的な高卒者の社会生活での不適応要因について、計量分析を行い、現状を把握することを目指した。高卒者を追跡したパネル調査に参加し、本年度は高校生時点と高卒後2年半の2時点における自信の変化ということに焦点を置き、3割以上の者で2時点間で自信が変動していること、その理由として高校生活における質問項目は2年半後の自信には影響力をもたず、2年半後の自信は現在の環境に強く規定されるということが見出せた。第一、第二の成果の一部は学会発表、第三の成果はディスカッションペーパーとして発表を行った。
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Equity in Education and the Japanese Model of Ability Grouping & Tracking : A Comparative Perspective (教育における平等と日本版能力別指導・トラッキングの国際比較研究)平成15年度〜平成17年度科学研究費補助金報告書
ページ: 22-28
ページ: 1-21
東京大学社会科学研究所 パネル調査プロジェクト ディスカッションペーパーシリーズ No. 13
ページ: 1-19