昨年度までの研究では、不登校経験者の受け入れを目的とする義務教育後の学校2校において、「心の問題」「進路形成の問題」を達成するプロセスと、卒業後の就学・就労継続の困難性という課題を見出してきた。今年度は、不登校経験者の受け入れを目的とする義務教育後の学校の多様性をふまえ、事例とする2校の実践・成果・課題の一般性・特殊性を確認するために、4校の高等専修学校を対象にヒアリング調査を行った。これらより見えてくるのは、義務教育後の学校による不登校支援が「神経症型不登校」と呼べる子どもたちに焦点を置き、恵まれない家庭環境に育ち怠学的に不登校になるような「脱落型不登校」と呼べる子どもを排除しがちであるという姿である。 また、「脱落型不登校」への支援が欠如するという構図は、他の不登校支援でも見られる。首都圏のA県3市で行った家庭訪問相談員についてのヒアリング調査でも、家庭が関わりを拒否する不登校の子どもには支援の手が届かないという困難が見出された。 なお、不登校経験者の受け入れを目的とする義務教育後の学校2校でのフィールドワークも継続した。本年度は、卒業後の進路での不適応につながるにもかかわらず、なぜ教師は生徒との親密な関係を築こうとするのかということについて、教師へのインタビュー調査を行った。その結果、教師が生徒と親密な関係を築くのは、生徒の登校継続に加え、生徒に指導に耳を傾けさせるという、将来的な社会的自立に向けた営みを兼ねていたためだということが見出せた。しかし、教師が生徒と親密な関係を築くその実践は、生徒の自主性が育たないという課題も教師から指摘されている。その背景には、不登校経験を持つ生徒が職業への移行に向けて抱えているとされる課題が多いということがあり、生徒の進路形成の過程でさまざまな点を「課題」として付与する社会のあり方を問い直すべきなのではないかという結論に達した。
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