2008年7-9月、11-12月は、博士論文を完成させるための2章分(論文量としては2本に相当する)を執筆した。1章は『民族問題マトリョーシュカ構造論と民族問題研究の再考』として「民族問題とは何か」という原初的な問いをもとに書き上げた、理論面にかんする論文である。もう1章は『ソ連末期における沿ドニエストル地域の自治領域創設運動』と題して、これまでに書き上げた論文である、ガガウズ自治領域創設運動、リトアニア・ポーランド自治領域創設運動のケーススタディとともに、博士論文の三本柱を構成する予定の論文である。両論文とも現在までのところ博士論文の一部として書き上げたが、今年度は、そのうちの少なくとも一つを編集し直し、雑誌論文に投稿・掲載させたいと思う。 2008年12月から2009年2月まで、海外調査を実施し、モルドヴァのViitorul Foundationやモルドヴァ国立統計センター、ベッサラビア正教会などを訪問した。これは2009年3月の国際会議の発表に向けた資料収集であったが、予定していた資料の収集に困難が生じ、研究発表に十分な資料の獲得に必ずしも成功したとはいえない。資料獲得の確実性という点を念頭に、今後の資料収集方法への教訓としたい。また、海外調査期間中は、エストニア・ラトヴィア・リトアニアの文書館・図書館にも足を伸ばした。ここでの資料収集は今年度執筆を予定している、『独ソ不可侵条約付属秘密議定書の公開をめぐる問題』と題する論文のために行ったものである。短期間の滞在ではあったが、予定していた資料を概ね集めることができた。
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