研究課題
生体系を含む多くの現実的な系においては、非常に大きな数の原子・分子が現象に関与しており、物理的洞察を得る上で大きな妨げとなる。前年度までの研究においては、熱浴にさらされた系やレーザー場と相互作用する系などを対象とし、ある条件下では、そのような多自由度の系から化学反応を本質的に記述するただ1つの座標と、反応の成否を決定する力学構造を取り出すことが可能であることを示した。本年度は、その成果をより現実的な系の理解へと適用していく上で不可避と考えられる3つの課題について考察を進めた。第一に、これまでの理論では考えられていなかった分子回転の効果を取り入れ、反応の可否を厳密に予言することを可能とする反応座標が反応モード・振動モード・回転モードが相互作用しあう状況下でも抽出し得ることを示した。この手法を用いて回転モードの影響によって反応分割面が変化する様子が明らかになった。第二に、前年度までの研究の出発点となっていた一般化ランジュバン方程式について、熱浴自由度が平衡でなく時間変化する場合への拡張を定式化した。これは光化学反応のように非定常な熱浴を作り出して反応を制御するような系にこれまでの本研究の理論を適用することを可能にするものである。第三に、具体的な系についてその系が従う一般化ランジュバン方程式を求めるために、実験またはシミュレーションで得られた時系列から一般化ランジュバン方程式に現れる平均力ポテンシャルや摩擦核を求める方法を構築した。前年度までの成果と合わせて、様々な具体的な系で化学反応の成否を決定付ける原理の理解や反応制御への応用につながるものと期待される。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (10件)
The Journal of Chemical Physics
巻: 134 ページ: 114523-114534
巻: 134 ページ: 084304-084314
巻: 134 ページ: 024317-024329
Advances in Chemical Physics
巻: 145(印刷中)
AIP Conference Proceedings "International Conference of Numerical Analysis and Applied Mathematics 2010"
巻: 1281 ページ: 1582-1584
Physical Chemistry Chemical Physics
巻: 12 ページ: 15382-15391
Physical Review Letters
巻: 105 ページ: 048304-048307
巻: 12 ページ: 7636-7647
巻: 12 ページ: 7626-7635