バイオインフォマティクスとケモインフォマティクスの融合であるケミカルゲノミクス情報に基づく新規なインシリコ創薬手法を用いて、GPCRであるケモカイン受容体CXCR4およびCXCR4と共通のSDF1(CXCL12)を内在性アゴニストとするGPCRとして近年明らかにされたリガンド未知のケモカイン受容体CXCR7に対する相互作用予測を行った。既存のデータベースより、GPCRに相互作用する既知化合物約3800、GPCR約390の配列情報、およびそれらの相互作用データ約8000を収集した。収集した化合物の特徴量をDRAGONXによって、GPCRの配列情報をミスマッチカーネルによってそれぞれ数値化し、それらの多種多様な相互作用パターンを機械学習モデルの一つであるサポートベクターマシン(以下SVM)を用いて学習させ、予測モデルとした。構築したモデルに対して、ナミキ商事に収められている約300万化合物を予測対象とした大規模バーチャルスクリーニングを行った。これらの化合物を予測するのに要した時間は約1か月であり、ドッキングシミュレーション等の従来法に比べてもSVMによる手法は、はるかに短時間で予測ができることが明らかとなった。予測スコアが高かった化合物に対して、実際にCXCR4およびCXCR7の阻害実験を行い、それらの結果から、いくつかのヒット化合物を得ることができた。本手法はこれまで広く用いられてきた化合物の構造的な類似性からリガンドを創出するものではないので、従来法では見つけることのできなかった非常に多様性に富む新規骨格を有する化合物の創出も可能となり、既知化合物とタイプの異なる化合物の探索への適用も期待される。
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