耐震性が不足する戸建木造住宅の耐震補強および新築住宅の耐震性向上に向けて、地震エネルギーを効率的に吸収し、住宅の損傷を防ぐ制振壁の研究開発を行っている。一方、ほとんどの戸建木造住宅は構造に関する高度な知識や技術を有さない設計者により設計されており、極めて簡易な構造計算法が用いられている。そのような設計者が制振技術を使用するためには、制振技術の簡易な設計法が必要といえる。そこで、戸建木造住宅の簡易かつ合理的な制振設計法を提案することを本研究の目的とする。 本年度は、戸建木造住宅全体の挙動に大きく影響すると考えられる柱・横架材接合部の挙動を把握するために、24試験体の実験を行い、外力と変形の関係を整理・把握した。制振壁に用いている接合部は、柱の引張力に対する変位が小さく、制振壁に適したものであることを示した。 上述した柱・横架材接合部の実験結果および釘・ビスのせん断実験結果に基づいて作成したフレームモデルの地震応答解析により、軸組木質架構の挙動を追跡した。本解析は過去に行なった制振壁の強制変形実験や木質制振架構の振動台実験を精度良く再現できることを確認した。そのフレームモデルを用いて柱・横架材接合部やビスの性能を様々に変化させた動的解析を行うことにより、制振壁に適する各部材の性能を把握するとともに、制振壁を用いた場合の地震時の応答変位低減の傾向を把握した。それによって、制振壁を用いた場合の地震時の最大応答変位低減の傾向を分かり易く示すとともに、軸組木質架構に制振壁を用いる場合の目標性能に対する制振壁の必要枚数を簡易に算定する方法を示した。
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