本年度の研究目標は、修士論文における研究誌未発表部分を加筆修正して投稿すること、及び〈修養〉論に関する史料収集であった。 第一の計画に関する成果としては、誕生期の〈修養〉について再検討を試み、論文を新たに2本執筆した。執筆完了時がともに夏期以降だったので学会発表は行っていないが、それぞれ、日本教育学会機関誌『教育学研究』、日本教育史研究会『日本教育史研究』に投稿、現在審査中である。これらの論文は、補助金(旅費)によって諸学会に参加して得られた知見を活かし、先行研究と関連する研究の書籍を補助金(物品費)で購入することによって執筆したものである。 第二の計画に関する成果としては、明治期の主な著作は国立国会図書館近代デジタルライブラリーで閲覧可能なので、雑誌に対象をしぼった。特に、〈修養〉言説が急増する1900年代について、管見の範囲では最初に「修養」欄を設置した雑誌『警世』、2番目に設置した雑誌『成功』の記事を精査し、必要な個所は複写をとり史料としてまとめた。雑誌『警世』は、現在では研究者の間でも忘れられているが、発刊されていた1900年代前半においては『教育時論』、『太陽』などの有力雑誌で頻繁に言及されており、歴史的に注目すべき史料である。雑誌『成功』は、歴史研究においてしばしばとりあげられてきた史料である。しかし、先行研究は十分とは言いがたいので、これらの分析を、21年度の研究として進めていきたい。
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