2009年度の研究目標は、1900年頃に広まった<修養>を史的研究の俎上にのせ、その特徴を明らかにすることであった。具体的には、同時代における<修養>言説の用いられ方を歴史性・社会性にもとづいて明らかにするとともに(第一の目標)、新たに誕生した自己形成の思想がどのような内実を有していたのか考察することであった(第二の目標)。またこれと並行して、<修養>すべき対象とされた「青年」の持つ意味が変化していることに着目し、それを探究することも目標とした(第三の目標)。第一の目標に関しては、論文「世紀転換期における<修養>の変容」としてまとめ、学術雑誌『教育史フォーラム』(教育史フォーラム・京都編、第5号、2010年)へ投稿、掲載された。この論文は、世紀転換期における<修養>言説およびその説かれた背景を明らかにしたものである。第二の目標に関しては、日本が「帝国」を目指す中で、「倫理修養」として新たな自己形成思想を説いた浮田和民に着目し、日本思想史学会にて学会発表を行った。また、その発表で得られた知見をもとに論文「世紀転換期における「帝国」と「教育」-浮田和民の帝国主義教育論-」を執筆し、日本思想史学会編『日本思想史学』へ投稿した(現在、査読審査中)。第三の目標に関しては、日本で最初に「青年期」が説かれた教育雑誌『児童研究』に着目し、日本教育学会で学会発表を行った。また、学会及びゼミで得られた知見をもとに大幅な加筆修正を加え、論文「近代日本における「青年期」概念の成立-『立志の青年』から『学生青年』ヘー」を執筆、京都大学人間・環境学研究科編『人間・環境学』へ投稿した(現在、査読審査中)。
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