本研究においては、微粒子の周期構造体を用いて新規光機能性材料の作製を行い、色素増感太陽電池や光触媒等への応用を目的として研究を行ってきた。特に従来の色素増感太陽電池では可視光に対しては光電変換可能であったが、800nm以上の近赤外光では光電変換ができないことが知られている。今年度の研究では、800nmより長波長の光を用いても光電変換を行うことが可能であることを見出した。n型半導体基板としてNbを0.05%ドープしたルチル型単結晶酸化チタン基板を用いて、表面にレジストコート、EB描画、スパッタリングによる金成膜、リフトオフ法によって金属ナノ微粒子周期構造体を作製した。周期構造の設計は、110x240x40nm^3とし、周期はそれぞれ、200nm、300nmとした。この構造設計においては波長650nmと1000nmに共鳴を有する構造体となっている。この酸化チタン/金周期構造体を作用電極とし、対極に白金線参照電極に飽和カロメル電極(SCE)を用いた系において三電極式光電気化学計測によって測定を行った。その結果によると、従来単結晶酸化チタン基板のみの条件においては、バンドギャップが3.2eVを有しているために、400nm以下の波長の光でしか光電流を得ることができないが表面に金ナノ微粒子周期構造体を有することにより、500nm以上の長波長の光を照射しても光電流が得られることがわかった。さらに、各波長に対する変換効率を調べるために分光器によって単色光を得、アクションスペクトルを測定したところ、共鳴スペクトルに対して良い一致を示すスペクトルが得られた。このことから、光電変換は金ナノ微粒子構造体と光との共鳴によって誘起されているものと考えられる。以上のことより今年度において私は、酸化チタン単結晶基板上に金ナノ微粒子周期構造を作製することにより、その共鳴に依存した光電変換を可視から近赤外の幅広い波長で達成した。
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