研究概要 |
Discorhabdinアルカロイド類は、1980年代後半に海綿より単離・構造決定された新しいタイプの多環式海洋天然物であり、ピロロイミノキノン骨格とスピロ環骨格を併せ持つ特異な構造を有している。当研究室ではこれまでに、PhI(OCOCF_3)_2(PIFA)を用いたジアステレオ選択的スピロ閉環反応を鍵反応としてdiscorhabdin類の中でin vitroで最も強い活性を持つdiscorhabdin Aの世界初の不斉全合成に成功している。そのような背景下、私はdiscorhabdin類の創薬研究に着手した。これまでに、discorhabdin Aのa)ピロロイミノキノン部とb)縮環N,S-アセタール部に着目して類縁体合成を行った。a)16,17-dehydropyrroloiminoquinone構造を持つprianosin Bの全合成を行った。b)縮環N,S-アセタール部の歪みのある五員環架橋を六員環架橋構造に変え、硫黄原子を酸化条件に対して安定な酸素原子に変換したdiscorhabdin A oxaアナログ設計し、合成した。さらに最近、in vivoでの活性発現が報告されているdiscorhabdin Bと同様の架橋型ジエノン構造を有するアナログの合成も達成した。生物活性試験の結果、prianosin Bの持つ16,17-dehydropyrroloiminoquinone構造は、活性を大幅に減弱させてしまうことがわかった。一方、oxaアナログはdiscorhabdin Aの4倍以上の活性を示すことが確認された。さらに種々のdiscorhabdin類を合成し、構造活性相関研究を行い、次のように活性発現に必須な構造情報が得られた。1)スピロ構造およびピロロイミノキノン構造2)C2およびC4位に1つ以上のハロゲン原子3)Nの保護基は電子求引基4)硫黄or酸素架橋構造5)ただし、8位置換基の種類および立体は影響しない。さらにヒト培養がん細胞(HCC)パネルアッセイを行った結果、discorhabdin類が既存の抗癌剤にはない新規作用機序を持つ可能性があることが見出された
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