オホーツク文化人骨37個体について、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコード領域に点在する単一塩基多型をAPLP(amplified product-length polymorphism)分析によりタイピングし、非コード領域の塩基配列データと併せてオホーツク文化人のmtDNAハプログループを同定した。分析の結果、オホーツク文化人集団における主要なmtDNAハプログループは、Y(43%)、G1(24%)、N9(11%)であった。これらのハプログループはいずれも北東アジアにおいて高頻度で検出されるハプログループであり、オホーツク文化人が北東アジア由来の集団であることを示している。オホーツク文化人集団におけるmtDNAハプログループの頻度分布を近隣集団と比較した結果、オホーツク文化人現在のアムール河下流域に居住する集団に近縁であることを明らかにすることができた。このことから、オホーツク文化人はアムール河下流域に起源をもつ集団であると考えられた。 Horai et al.(1996)で報告されているアイヌのmtDNA配列を見ると、ハプログループYをもつ個体が20%確認することができる。しかし、安達ら(2006)が報告している北海道の縄文・続縄文人にみられるmtDNAハプログループには、Yは存在しない。このことから、アイヌ集団でみられるハプログループYは、アムール河下流域集団からオホーツク文化人を経由してアイヌへともたらされたものだと考えられる。 本研究の成果は、私が第一著者として投稿論文にまとめ、人類学の英文誌Anthropological Scienceに掲載決定(現在印刷中)された。
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