北海道の縄文・続縄文人およびオホーツク文化人について、ABO血液型遺伝子の分析を行った。その結果、北海道の縄文・続縄文人の血液型頻度分布は現代日本人とは大差無かったが、サブタイプレベルでは違いがみられ、O^Gグループの頻度が著しく高いことが明らかになった。O^Gグループの頻度は日本列島内で緩やかな勾配を示し、東北部および南西部で頻度が高く、中央部で低いことが報告されている。このことと、本研究の結果を併せて考えると、縄文系集団ではO^Gグループの頻度が高く、渡来系集団でOグループの頻度が高かったと推測される。 また、オホーツク文化人においてはO型対立遺伝子頻度が著しく高いことが明らかになった。この高いO型頻度の原因としては、オホーツク文化人の起源であるアムール河下流域でO型頻度が高い可能性とオホーツク文化人がアムール河下流域から北海道へ移住した際に創始者効果が起こった可能性が考えられる。 縄文・続縄文人とオホーツク文化人との間では、対立遺伝子頻度は大きく異なるが、観察された対立遺伝子は共通しており、両集団が共に北東アジアからの影響を強く受けた集団であることを示唆するmtDNAの分析結果と矛盾しない。 上記のように、本研究では核遺伝子であるABO血液型遺伝子を用いて北海道の古代人の遺伝的特徴を明らかにすることができた。この結果は先史時代の北海道の考古学および人類学的研究に有用な情報を与えることができると考えられる。
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