本研究は、特に希土類系高温超伝導材料による次世代高温超伝導線材を対象として、その電磁現象を磁束挙動の観点から把握することにより、同線材を適用したマグネット化技術を開発することを目的としている。本年度に得られた成果は以下の通りである。 1.超伝導マグネット開発のためには、その規模を考慮すると超伝導線材同士の接続技術の確立が不可欠となる。本年度は、昨年度に開発した3次元電流密度分布評価手法を発展させ、線材接続部の交流電磁現象を明らかとした。特に重要な知見として、接続抵抗や通電周波数によっては電流が接続部を不均一に遷移することが示唆された。超伝導マグネットの交流利用は、電力系統用エネルギー貯蔵装置や電磁誘導加熱装置への展開が考えられるため、ここで線材接続部の電磁現象を明らかにできたことは大きな意味を有する。 2.超伝導マグネット開発のためには、特性の均一な長尺の超伝導線材が必要となり、例えば1キロメートルの長さの線材に対して1ミリメートル以下の分解能での特性の均一性の確保が重要となる。そこで本年度は、走査型ホール素子顕微鏡システムに外部磁界印加用コイルを導入することにより、次世代高温超伝導線材の非破壊かつ高分解能な評価手法を開発した。その結果、線材内の面内2次元での臨界電流密度分布が、100ミクロンの分解能で得られることを明らかとした。 以上により、高温超伝導マグネットの開発に不可欠な要素技術が得られたと認められる。
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