研究概要 |
1、四国中央部三波川変成帯汗見川地域の最高変成度岩石の岩石学的および熱力学的研究を行った。その結果、最高変成度部岩石のピーク変成条件は、P=15-19kb,T=500-520℃(エクロジャイト相)であり、現在見られる鉱物組み合わせは、上昇時においてエピドート角閃岩相(P=7-11kb,T=465-510℃)の条件で加水後退再結晶作用を被ったことにより形成されたことが分かった。さらに、Nano-SIMSを用いてジルコンU-Pb年代分析を行った結果、加水後退再結晶作用が、85.6±3.0Maに起きたことが分かった。これらのことから、汗見川地域に産する三波川最高変成度岩石は、120-110Maにエクロジャイト相の変成作用を被り、その後、上昇過程で85.6±3.0Maにエピドート角閃岩相の条件で加水後退再結晶作用を被ったことが分かった。 2、熱力学計算を用いて、三波川泥質片岩の累進および後退変成時の鉱物組み合わせを再現した。その結果は、昇温変成時において三波川変成帯は、緑泥石帯、パラゴナイト帯、ザクロ石帯、藍閃石帯、オンファス輝石帯の5つのゾーンに分かれていたことを示した。また、そこから得られる三波川変成帯の変成相系列は、従来考えられてきたものと異なり、下に凸の反時計回りの軌跡であり、そのタイプは、ヒスイ輝石-藍閃石タイプに分類されることが分かった。さらに、高変成度岩石ほど、上昇時における四万十帯北帯からの加水により昇温変成時の鉱物が消滅しやすく、その際、新たに再結晶鉱物が生成されやすいことも示した。これらの結果は、現在見られる鉱物組み合わせを用いても、累進変成作用を読み取ることはできないという非常に重要な新知見であるとともに、従来の沈み込み帯の累進および後退変成作用の概念の再検討を促すものである。
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