研究概要 |
Si-ULSIのスケーリング限界から電子のスピンの自由度を利用し,素子の高性能化を図る「スピントロニクス」が注目されている.申請者はSi-LSIとの融合を視野に入れ,半導体スピントロニクスの実現に向け,強磁性体Fe3Si/Geの高品質形成に関する研究を行っている. 本年度はFe_3Si/Ge界面の原子制御とFe_3Siの高規則化の両立を目指し研究を行った.試料は分子線エピタキシー法を用いて作製し,Fe/Si組成や成長温度の界面急峻性に与える影響を詳細に調べた.その結果,界面急峻性はFe/Si組成に強く依存していることが明らかとなり,Fe/Si組成のずれが大きい試料ほど界面ミキシングが顕著であった.また同時に成長温度の最適化も行っており,130℃での低温成長により,原子レベルで急峻な界面を実現した.これらの結果より,Fe_3Si/Geの原子層制御にはFe/Si組成の精密制御および低温成長が重要であることが明らかとなった. しかし,電子線回折パターンの解析より,低温成長試料ではDO3規則相が非常に少なく,規則化の最適成長温度は界面急峻性の最適成長温度とは乖離があることが明らかになった.そこで,界面急峻性と規則度度向上の両立を目指し,低温成長(130℃)とポストアニールを組み合わせた2段成長法を考案した.2段成長で作製した試料では原子レベルで急峻な界面を維持しており,さらに規則スポットの著しい増強が確認された. 以上ように申請者は安定な界面を用いた2段成長法により,初年度の目的であった原子レベルで急峻なFe_3Si/Ge界面と規則度の高いFe_3Si層の形成の両立に成功した.この成果は半導体スピントロニクスの研究の発展に大きく弾みをつける重要な成果である.
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