これまでFree Rotation Magnetic Tweezers(以下FRMT)により相同組み換えたんぱく質であるRad51の2本鎖DNAへの重合過程を蛋白質一分子レベルで測定することに成功していた。今年度はたんぱく質1分子当たりのDNAをねじる角度に関してさらに多くのデータを集め、統計的な解析をすることにより1分子あたりのねじり角度65度を割り出した。またRad51は1分子ごとにDNAに重合すること、75-100nM以下のたんぱく質濃度では重合が開始しないことなどもわかった。この一分子ずつ付着するメカニズムは多分子で重合する場合よりも、フィラメントに欠陥ができる確率を減らすことができるメカニズムである。これらの結果をもとにして出筆した論文を国際学会誌に提出した。その後査読結果のレフリーのコメントにもとづき、DNAに固定したビーズの逆回転運動がたんぱく質のDNAからの乖離であるという主張を補足するため、ATPとRad51でフィラメントを形成した後にADP溶液で置き換える、ないしATPもADPも存在しない溶液で置き換える実験を行った。その結果、ATPもADPも存在しない溶液ではDNAに固定されたビーズの逆回転が見られたのに対し、ADP存在下では逆回転が見られなかった。これは少なくともフィラメントがADPを放出しない限りはたんぱく質がDNAから乖離しないことを意味する。これらの実験結果を含めたことにより論文が採択された。また国内の学会においてもこれらの成果を発表した。今後はこれらのたんぱく質がDNAをねじる際に出すトルクのより精密な計測に焦点を絞る予定である。
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