初年度では、本研究課題のための第一段階として位置特異的にDNAに結合するラジカル分子の設計・合成を達成し、種々の分光学的測定によりニトロニルニトロキシドラジカル置換ナフチリジンカーバメートダイマー(NCDNN)をDNA上に配置させることが可能であることを見いだした。これはDNA:NCDNN=1:2の結合であり、その電子スピン間には相互作用が働くことが期待される。今年度はスピン間相互作用・スピン間距離についての新たな知見を得るために、液体ヘリウムを用いた低温でのcw-ESR測定を行うと共に、アドバンスな電子スピン磁気共鳴法であるPulsed-ELDORを用いることでそのスピン間距離に関する情報を抽出した。低温(3K)でのESRからは、その禁制遷移領域にΔMs=±2に相当するシグナルを観測し、そのスピン間に交換相互作用が有効的に働いていることを示唆する結果を得た。またPulse-ELDORを用いた実験により、DNA上に配置されたラジカル間距離に関して、1.8mm及び2.0mmに二大分布を有することを明らかにした。これはニトロニルニトロキシドがbulkなラジカル部位であることから、その構造に分布を与える結果に至ったと考えられる。なお、この成果はChemical Communications誌に掲載された。
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