ナチュラルキラー(NK)細胞受容体ファミリーにおけるCタイプレクチン受容体スーパーファミリー(NKR-CLR)とToll様受容体(TLR)とのクロストークを調べるために、NKR-CLR遺伝子をクローニングし、TLRシグナル伝達に及ぼす影響ならびに細胞表面における各タンパク質の発現状態に関して調査した。NKR-CLRであるNKG2A、CD94、NKG2DならびにDAP10遺伝子をTLR2遺伝子とともに293細胞に遺伝子導入し、NF-κB転写活性をルシフェラーゼアッセイで確認した。NKG2D及びDAP10遺伝子を導入することにより、TLR2リガンド刺激で活性化されるNF-κB転写活性が阻害された。また、NKG2AならびにCD94遺伝子導入によるTLR2依存性NF-κB転写活性に変化はなかった。一方、各NKR-CLRの遺伝子導入によってTLR3依存性IRF-3転写活性が影響を受けることはなかった。そこで、TLR2ならびにNKG2Dの発現状態に注目し共焦点レーザー顕微鏡解析を行ったところ、両受容体は細胞内外に発現していた。フローサイトメトリー解析からNKG2DはDAP10遺伝子導入時のみに細胞表面に発現することが明らかとなったが、TLR2遺伝子の導入はNKG2Dの発現状態に影響を及ぼさなかった。次に、NK細胞株であるNK-92細胞株を用いてNK細胞に発現しているTLRの生物学的機能を調査した。種々のTLRリガンドで刺激したところTLR3リガンド刺激でのみNK-92におけるIFN-γ産生が誘導され、また、K562標的細胞株に対する細胞傷害活性が増強された。これらの実験結果から、NKG2D/DAP10複合体の発現はTLR2下流のNF-κB活性を特異的に抑制することが示唆されるため、NKG2D/DAP10複合体を刺激した状態での免疫沈降等を行うことで、このメカニズムの解明に取り組んでいる。
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