研究概要 |
本研究は自己集合性脂質のキラル会合構造をもとに,その超分子特性やナノ繊維構造を生かした機能性材料の開発を目的としており,本年度はβ-アラニンを頭部に導入した両親媒性脂質(2C_<12>-NH_2)の合成を行い,親水性・疎水性溶媒で利用可能なキラル会合体の構造評価および色素法によるキラル分子配向構造の評価を行った。 頭部β-アラニンを導入した自己集合性二鎖型L-グルクミド誘導脂質2C_<12>-NH_2を合成し,元素分析,FT-IR,^1H-NMR分析により確認した。 2C_<12>-NH_2のゲル化能を転倒法により評価した。アセトニトリルなどの親水性溶媒からヘキサンなどの疎水性溶媒にまで高いゲル化能を示し,ベンゼングルの凍結乾燥から得たキセロゲルのSEM観察では発達した三次元ネットワーク構造が確認された。 TEMおよびAFMによる微細構造観察では,水中では直径約10nmのナノチューブが観察された。一方で,アセトニトリルやベンゼン,THF,ヘキサンなどの有機溶媒中ではそれぞれナノ繊維が観察され,繊維幅や形態は溶媒の極性効果により異なる。 UV-vis,円二色性スペクトル(CD)法よる2C_<12>-NH_2の配向状態の評価から,不斉性が分子会合により著しく増大することが確認された。また,アニオン性色素をカチオン性脂質2C_<12>-NH_2と配向させ,アキラル色素の誘起CDの評価を行った。水中では色素の色(赤紫)が,2C_<12>-NH_2によって色素間の配向か制御され,J-会合(紫)からH-会合(橙)への安定化に伴う誘起CDや色の変化が確認された。一方,ヘキサン/エタノール混合溶媒では色素はH-会合(黄)で安定化する。同一色素であっても溶媒の極性によって誘起CDの発現波長を変化させることができ,本脂質のアミノ基をホスト部位して用いることでゲスト分子の配向構造を制御し,従来にはない機能を発現させることが可能である。
|