私の研究課題は、「古典新星」や「スーパー軟X線天体」と呼ばれている白色瑞星連星系から放射されるX線を詳細分光観測することで、その進化や現象を解き明かそうというものである。天体の多くは連星系をなしており、これらは宇宙を解明するための重要な足がかりともなる。しかし、これらの多くは突発現象であるために観測が難しく、特にX線では詳細な観測がほとんど行われていなかった。そこで我々は、日本のX線天文衛星「すざく」を用いて効果的にこれらの突発天体を調査、観測する手法を開発し、本研究課題の解明に取り組んだ。 本年度は主に2つの天体を観測した。ひとつは2007年8月に爆発したにぎつね座新星」である。「すざく」衛星は爆発から88日後に本天体の観測を行い、多くの輝線を持つX線スペクトルを得た。我々は高温プラズマモデルを用いて詳細なスペクトル解析を行い、白色矮星の種類などを推定した。もうひとつは2008年4月に爆発した「はくちょう座第2新星」である。我々は、「すざく」衛星による緊急即応観測を提案し、爆発から約9日後と29日後にそれぞれ半日程度の観測を行った。古典新星は可視光で明るくなり、発見された後は暗くなるのが一般的であるが、「はくちょう座第2新星」は発見後に再び明るくなるという極めて珍しい古典新星である事が確認された。この様な現象は過去に3例しか発見されておらず、我々のX線観測は幸運にも予想をはるかに超える貴重な結果へと昇華した。さらに観測結果も実に特徴的で、爆発9日後の「すざく」衛星による観測からは70keVという過去最高のエネルギーまで放射された硬X線スペクトルを得ることに成功した。こうして、まだ少数ではあるが我々は白色矮星連星系を理解する上で貴重な観測例を得た。今後もさらに観測例を増やし、これらの統一的な理解を目指す。
|