研究概要 |
本研究の目的は、土壌圏からの植物由来の呼吸量を正確に把握し,森林炭素循環における根呼吸の定義の明瞭化と定量化を目指すことであり,本年度は主にフランスにおける森林で安定同位体を用いてのパルスラベリング実験および測定を行った。 2008年10月よりひきつづき、フランス国ボルドー市、国立農業研究所ボルドー支所において炭素安定同位体13Cを樹木にラベリングし、そのシグナルを得ることで樹木の炭素の流れを解明する「CATS(Carbon Allocation of Tree and Soil)」プロジェクトに参加し、光合成産物が根へ到達する速度を測定するための土壌呼吸連続測定とサンプリングによる根中の13C炭素含有量測定を担当するとともに、土壌呼吸における根呼吸の役割を評価するために、日本において開発した根呼吸を非破壊に測定する手法を13C測定に応用し測定を行った。パリ・ナンシーでの実験にも参加し、これらの結果より主要な3樹種であるブナ・カシ・マツにおいて、光合成産物の地下への到達スピードにおおきな違いがみられることを明らかにした。被子植物であるブナ・カシではラベリング後およそ10-32時間で光合成産物は地下部に到達するが、裸子植物であるマツでは40-120時間と4倍以上の違いがみられた。またマツの根での炭素の移動速度は0.09m/hであった。これらの結果は2009年9月、ウィーンにて行われた国際学会で発表するとともに、2010年3月にヨーロッパCOSTミーティングのワーキンググループでの発表を行った。
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