量子色力学(QCD)が支配する現象を実験との比較可能な方法で研究する手段として相対論的重イオン衝突実験がある。特に超高温で実現すると予想されているクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)の物性の研究が中心的な興味である。我々はその中でもQGPの中での重いクォークの拡散現象に注目して研究している。重いクォークの拡散現象を通じて、重いクォークからQGPに放出されるエネルギーの損失の大きさやそのメカニズムを調べることができる。 相対論的重イオン衝突実験で作られたQGPは強く相互作用する物質であることが先行する他の研究から示唆されており、そのため理論的な計算が難しい非摂動的領域であることから、我々はまずは第一歩として実験データからの拘束・知見を得ることを目標とした。その結果、エネルギー損失は、予想されたとおり摂動計算の予想値よりもかなり大きくなければならないことが分かった。この研究結果を論文にまとめ、Physical Review C誌に投稿し、まもなく受理される予定である。 これまでの成果は、一粒子分布のスペクトルという実験データに注目したものである。さらに二粒子分布のスペクトルから、さらなる拘束を得ることを目的として二粒子の角度相関の研究にも着手した。これについては、平成21年度の早いうちに論文にまとめる予定である。 また、関連分野について広く知るためのフィールドワークとして、イタリアのECT*で平成20年五月から七月の間、開催されたDoctoral Training Programに参加し、同世代の研究者と交流・議論した。アメリカのKnoxvilleで平成21年3月にる行われる関連分野の最も大きな会議であるQuark Matter2009に参加し、研究成果を発表した。
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