研究目的は、40万人規模で日本に存在する「ひきこもり」という現象の原因理解とその支援・解決である。これまでの調査研究の中でひきこもり状態にある人にはいくつかのサブグループがあることを示してきた。中学・高校で陥ることり多い「拘束型」と、大学で陥ることの多い「開放型」があるとした。研究の1つとして大学でのひきこもりについて初めての量的調査を行った。大学の中学・高校の不登校既往はおおよそ7割が経験していない。これは、大学でひきこもり状態になっている者と中学・高校でひきこもり状態になっている者の質的な違いを示すデータだと考えている。 また、この期間に厚生労働省でのひきこもり科研に参加し、新しい版のひきこもり対応ガイドラインづくりに関与してきた。現在までの研究結果を政策に反映することに成功した。 家族とひきこもりの関係性について考察することを目標にし、経験者、支援者への調査を行った。この調査の結果、家族とひきこもりの関係性がより明らかになったと考えている。ひきこもりとは、社会的関係を持たないこと、家族以外の他者とコミュニケーションをしないことをいうが、ひきこもりの家族を調査した結果、本人がひきこもる以前に、家族がひきこもり状態にあることがわかった。加えて、そのような家族像は近代家族の報想像とされてきたことから、近代化とひきこもりの関係が示唆された。研究結果は牟田和恵編『家族を超える社会学』(新曜社)「ひきこもりと家族」にまとめた。
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