本研究では、機能性分子種を利用して共役系分子からなる超階層構造体の構築を目指す。前年度から新たにヘリセン-ヘリセン間に働く立体的な相互作用を用いた共役系分子種の配列に関する研究を新たに開始した。ヘリセン分子は、分子骨格自体が不斉を有する三次元的ユニークな構造をしており、光学的に優れた性質を有する。さらに、光学活性なヘリセンは一次元状集合体を形成可能なことが報告されている。しかしながら、合成の煩雑さから、アルキル鎖以外の置換基を導入したヘリセン誘導体の配列例は報告されていないのが現状である。そこで本年度は、ヘリセン骨格を有する機能性分子種の配列を試みた。 本研究では、水素結合部位を有するヘリセン分子を新たに設計し、不斉触媒と光学分割により光学活性なヘリセンを合成した。そして、この分子が非極性溶媒中から調製した場合にのみ、分子間の多点水素結合とヘリセンのヘリシティーの相互作用により軸比の高いナノファイバーを形成することを見いだした。興味深いことに、非極性溶媒中で非常に大きな円偏光発光特性を有することを明らかとした。このように、新規なπ共役系分子として、超分子ビルディングブロックとしての新規性・優位性を示す結果を得た。このような分子デザインは今後、ヘリセン骨格を基体とした超分子および超分子集合体、さらには高分子の階層構造体の構築に関する研究に大いに貢献できると期待される。
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