平成21年度は、ラオスやタイでの現地調査を中心に研究活動をおこなってきた。前半は、ラオス北西部ボーケオ県の3つの調査村(ルー族、カム族、ラオ族)に赴き、出稼ぎの実態を明らかにするための調査をおこなった。具体的には、ランダム摘出による計90世帯の家計調査とインタビューを実施した。その結果、同一の調査村のなかでも出稼ぎの紹介者の有無によって、就労内容や出身社会との紐帯に個人差が見られた。またどの調査村においても、タバコの栽培や養豚業におけるタイ企業との提携といった、北タイとの経済面でのつながりが明らかになった。 7月からは調査地をバンコクに移した。出稼ぎを経たのちにタイ人男性と結婚し、バンコク郊外に居住するルー族の調査村出身の女性にインタビューを実施し、タイで就労したのちに配偶者と自営業を営むようになった彼女が、出身村の若年者を従業員として優先的に呼び寄せるようになるまでのライフヒストリーを収集した。また、国内における出稼ぎの規模が、タイへのそれと比較して小さいことに関心をもち、国内出稼ぎについてのインタビューを実施した。具体的にはビエンチャン市内のレストランにおいて、経営者と労働者本人から聞き取り調査をおこなった。また11月にはラオス南部サワンナケートの日系縫製工場における、南部出身の出稼ぎ労働者の採用面接に随行し、経営者と労働者の双方から聞き取り調査を実施した。 12月後半からは再度ボーケオ県の調査地に赴き、特にルー族とカム族の2村に特化した調査をおこなった。前回と同一の世帯を対象に、家計調査とインタビューを実施した。ルー族の村においては、近隣のカジノ建設にともない急増した中国人労働者をターゲットとした養豚業が顕著になり現金収入が増大したのに対して、充分な土地や資金を持たないカム族の村はこの流れに乗り遅れ、タイへの出稼ぎが依然として継続されているという実態が明らかになった。
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