研究概要 |
本年度は,微量水銀の動態予測モデルの構築のために必要となる基礎コードの作成を行い,それを用いて八代海および有明海の潮汐・潮流特性を解析した.特に,実際に水銀汚染が生じた1960年以前の八代海についてはその流動は知られておらず八代海沿岸の干拓,さらには実測データの解析も行ない検討を行った.有明海および八代海では,排水不良の改善や農業振興のため古くから干拓が進められてきた.干拓による地形の変化は湾の固有周期を減少させ,共振潮汐が卓越する両海域の潮汐・潮流現象に影響を及ぼす.しかし,潮汐の長期変動に関しては,現在までに詳細な検討は行われていない.そこで,本研究では実測潮位データの解析と数値シミュレーションによって,有明海および八代海の潮汐振幅の長期変動を調べた.実測データとして,熊本県の三角検潮所の潮位データ(1931年6月~2007年12月,1時間毎)を用いた.解析は最小二乗法による調和解析で,分解期間を29日間として10分潮に分解して,15日間隔で経時変化を調べた.また,29日間の中にデータの欠測か1つでもあるものは除外して整理した.数値シミュレーションには海洋の研究で広く用いられているPrinceton Ocean Model(POM)に干潟モデルを組み込んだものを用い,南側の開境界に振幅75cmのM_2潮を与えた.また,過去から現在までの潮汐変動を比較するために1900年代,1960年代,1980年代,2000年代の4パターンの地形を作成し,解析を行った.その結果,有明海湾口の口之津では干拓が進むにつれて振幅は増加傾向に,増幅率は減少傾向にあることが分かった.また,八代海では振幅・増幅率共に増加傾向にあることが分かった.
|