カイコ培養細胞における、DNA二重鎖間架橋(ICL)損傷に対する応答について検討しました。DNAにICLを導入したオリゴヌクレオチドと非導入型のオリゴヌクレオチドを準備し、それぞれ相同組換えを定量的に測定できるベクターへ挿入し、カイコ培養細胞にトランスフェクションしました。その後、培養細胞のルシフェラーゼ活性を測定し、その値を相同組換えの頻度として検討しました。その結果、ICL導入型の培養細胞は非導入型の細胞に比べ、ルシフェラーゼの値が、約二倍上昇しました。この結果は、カイコの培養細胞がICLを認識し、相同組換えを誘発したことを示唆しています。 そこで、ファンコニ経路について詳細に解析する為に、ファンコニクンパク質FancD2のモノユビキチン化についてイムノブロッティングで解析しました。その結果、クロマチン分画において、FancD2のバンドが上方にシフトし、そのバンドは519番目のリジンをアルギニンに置換したミュータントでは消失していました。このことから、FancD2の519番目のリジンがモノユビキチン化されると考えられました。 次に、FancD2と相互作用するタンパク質をInsect Two-hybrid法を用いて解析しました。他のファンコニタンパク質との相互作用を検討した結果、FaneIとの相互作用を検出することができました。 FancD2-FancI間の相互作用は、他の生物でも報告されています。この相互作用をYeast Two-hybrid法での検出を試みたところ、ポジティブな結果は得られませんでした。このことから、カイコ培養細胞内在の、別の因子がこの相互作用に必要であると示唆されました。先ほど用いたFancD2のミュータントでもFaneIとの相互作用が検出されたことから、FancD2のモノユビキチン化はFancD2-FancI間の相互作用に必要ではないと考えられます。
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