膜間相互作用の定量化を目的として、本年度はメンブレンチップの設計・開発に主眼を置いた。これまでの研究より、リポソームを固体基板上に固定化すると、本来の構造を保てない場合が多く、検出用素子をリポソーム内水相に保持できない。そこで、本年度では、(1)膜間湘互作用の解析のためのメンブレンチップの設計、(2)相互作用解析手法の構築、に着目して検討を進めた。 (1)「膜間相互作用の解析のためのメンブレンチップの設計 電極へのリポソームの物理吸着/化学吸着による固定化条件の最適化を図った結果。嵩高い結合部位(カルボキシル基)を有するリガンドを修飾したリポソームを、アミノ基を末端に有するチオール自己集合膜に固定化する手法が最も効果的であった。固定化密度など、改善すべき点は残っているが、現状では相互作用解析に利用できる技術水準には達したと考えられる。 (2)相互作用解析手法の構築 メンブレンチップでは、相互作用情報が網羅的に得られるので、多変量解析による情報抽出が最も効果的である。そこで、膜間相互作用を主成分分析により解析した。その結果、膜の表面状態に応じて相互作用強度が異なることが示唆された。 以上より、メンブレンチップにより、膜間相互作用の定量化、および、膜特性や定量化の難しい表面状態と相互作用強度との関連性を議論できることが分かった。
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