仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者の増加に伴い、近年、労働者のストレス対策の必要性が高まっている。本研究では労働者を対象とした個人向けストレス対策プログラムを開発し、プログラム実施の効果を検討することを目的とした。本年度は個人向けストレス対策に関する、(1)先行研究の文献レビュー、および、(2)ストレス対処法に関するweb学習プログラム(作成は昨年度)を用いた無作為化比較試験の実施、の2点を中心に調査および研究を行った。(1)個人向けストレス対策に関するシステマティックレビュー(60研究)の結果から、労働者を対象とした個人向けストレス対策として認知行動的介入方略が多く用いられており、労働者のストレス対策として一定の効果が認められていることが確認された。さらに、近年のストレス対策で用いられる方略の傾向として、ストレスや抑うつといったメンタルヘルスに関わるネガティブな側面だけでなく、職務満足感やパフォーマンスなどのポジティブな側面の改善を目的としたアプローチが増加していることが明らかとなった。(2)無作為化比較試験の結果に関して、ストレス対処法に関するweb学習の実施により、受講者のストレス対処法に関する知識、問題への対処法、職務満足感、知覚された上司サポート、に関する得点に改善がみられた。このことから、本研究で作成した学習プログラムの実施が労働者のストレス対策で使用する方略の1つとして、有効である可能性が示唆された。
|