研究概要 |
Ergot alkaloid類はカビの菌核より抽出されたインドールアルカロイドであり、lysergic acidをはじめとして数多くの天然物が報告されている。この骨格を有する誘導体には、パーキンソン病治療薬であるペルゴリド、ブロモクリプチンなど重要な医薬品が知られている他、近年ではケモカイン受容体CXCR3に対するリガンドなども報告されており、ergot alkaloid骨格の天然物型創薬テンプレートとしての潜在能力が期待されている。報告者は、パラジウム触媒によるアレンの連続環化反応を鍵反応としたergot alkaloid骨格の合成を計画した。市販の4-bromoindoleから10工程で合成したpropargyl vinyl etherに対して金触媒によるClaisen転位反応を行うことで連続反応の基質となるアレン誘導体を合成した。合成したアレン誘導体に対して、パラジウム触媒を用いた連続環化反応を行うことで、ergot alkaloid骨格を良好な収率で合成できた。さらに官能基変換により生理活性天然物であるlysergol、isolysergolおよびlysergic acidの全合成を達成した。また、本合成経路の鍵反応である連続環化反応に関して、立体選択性におけるアレン軸不斉の影響を検証するとともに、反応機構の解明を試みた。その結果、アレンの軸不斉が目的物である環化体にある程度反映されることが分かった。本研究を不斉合成へと展開するために、アミノ酸であるセリンを出発原料とした別経路によるergot alkaloid骨格合成法の開発研究を行った。今年度は、不斉全合成の鍵反応となるパラジウム触媒を用いたエチニルアジリジンとアルデヒドとの還元的カップリング反応の詳細な検討を行い、良好な収率で目的の1,3アミノアルコールを得ることができた。
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