研究概要 |
(1)高脂血症および高血圧対策米の開発 血清コレステロール値低下作用を有するラクトスタチンペプチド(IIAEK)および高血圧低下作用を有するノボキニンペプチド(RPLKPW)を可食部に集積させた生活習慣病予防米の開発を進めた.組換えイネ作出には,イネゲノム由来の選抜マーカー遺伝子(mALS)を用い,その宿主にはコシヒカリ系統を用いた. 6連結したラクトスタチンを種子貯蔵タンパク質(グルテリン)との融合タンパク質として発現させた形質転換種子を用い,ラットへの経口投与試験をおこなった.形質転換種子よりグルテリン画分を調整し,ラクトスタチンの有効投与量(300mg/kgラット体重)相当のグルテリン画分を経口投与したところ,非形質転換種子のグルテリン画分投与群と比較してLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が有意に低下した. ラクトスタチンと同様に,グルテリン融合型(4つのノボキニンを含む)を用いてノポキニンを蓄積させた組換え米について,高血圧ラットを用いた経口投与試験をおこなった.組換え米粉末1g/kg相当を投与した高血圧ラット群においては,有意な血圧低下がおよそ6時間持続することを確認した. ラクトスタチンおよびノボキニン蓄積米は,カルタヘナ法に準じた隔離ほ場における遺伝子組換え生物第1種使用申請の準備を開始した. (2)低アレルゲン米の開発 米アレルギーの原因となる主要な3アレルゲン,14-16kD,26kDおよび33kDアレルゲンを低減化した米の開発を進めた. 26kDアレルゲン欠失型コシヒカリ系統Gbn1を宿主として,14-16kDおよび33kDアレルゲンの抑制遺伝子カセット(RNAi法)を同時挿入した.その結果,目的通り主要な3アレルゲンを強く低減化したコシヒカリ系統の作出に成功した.この形質転換米を用い,イネアレルギー患者血清との反応性試験の準備を開始した.また,新たなアレルゲンを同定し,それらの低減化も目指す予定である.
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