研究概要 |
非球面ガラスレンズは通常,除去加工方法である研削や研磨により加工が行われており,生産性が低いことが問題となっている.これに対して,高温度ガラスプレス加工は,ガラスボールをガラス転移点より数十度高い温度まで加熱し軟化させ,それを金型を用いて加圧し成形することでレンズを成形する.そのため加工時間が短く,生産性を高めることができると考えられる.しかし,型となる金型をいくら高精度に作製しても,高温で成形するため熱膨張やプレス応力による金型の変形が発生し,成形したガラスは要求する精度を満たさない.これを解決するために従来は試行錯誤により金型を修正し,プレス成形後の形状が目的と形状と一致するようにしてきたが,コストが高いという問題がある.そこで本研究ではガラスプレス成形工程を解析することにより,金型の変形量とガラスレンズ冷却収縮量を計算した.この結果から,あらかじめ金型とガラスの変形量を推定して金型を作製できるようになり,金型の作製時間とコストを大幅に削減することができた. また従来のプレス成形ではガラスと金型を一緒に成形温度まで加熱し,プレスの後,冷却してガラス形状を固めるという等温成形で加工をおこなっていた.ガラスプレス加工をさらに高速化するために,ガラスをあらかじめ成形温度より高い温度まで加熱し,搬送ロボットで金型の上に載せ,プレス加工してレンズを成形する.その後わずかに徐冷してから,成形したレンズのみを冷却プレートに運び室温まで冷却するという非等温成形で加工する.この方法では,金型の温度変化が少なく,またガラスとの接触時間も短くなるため,金型とその表面のコーティング層の寿命が延びることも期待できる. 以上の結果より,ガラスプレス成形時間を約6分から2分に大幅に削減することに成功した.この結果,高速,高精度,低コストでガラスレンズをプレス成形できるようになり産業に役立つと考えられる.
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