従来、プレスによる非球面ガラスレンズ成形は、ガラスと金型が一緒に成形温度まで加熱し、プレスの後、冷却して非球面形状を固めるという等温成形で加工が行われており、生産能率が低いという問題がある。ガラスレンズプレス成形加工を高速化するために、ガラスを予め成形温度より高い温度まで加熱し、搬送ロボットで相対的に低い温度の金型上に載せて、プレス加工してレンズを成形する。その後、成形したレンズのみを冷却プレートに運び室温まで冷却するという非等温成形で非球面レンズを成形する。有限要素法(FEM)を用いて、非等温成形における予備加熱時のガラスの最高温度とプレス時の金型の最低温度をシミュレーションによって予測した。また、プレス時の金型とガラス間の熱伝導及びプレスによるガラスの変形を連携解析し、応力とひずみ変化をシミュレートした。その後、アニーリングと冷却をシミュレーションし、最終のレンズ形状誤差を計算できた。この結果より、非等温成形と等温成形の差異がわかった。実験結果より非等温成形法で成形加工能率が3倍まで上がった。また、金型の温度変化が少なく、金型とガラスの接触時間が短くなったため、金型とその表面薄膜の寿命が延びることが確認された。 また、初めてプレスによる微細形状成形を試みた。ガラス上に微細形状を加工するのはMEMS技術を利用する必要があり、加工周期が長い、コストが高いという問題がある。これに対して、微細形状有する金型を用いて、高温プレスによりガラス上に転写することより高能率に微細溝を創成する。シミュレーションにより得られた最適化成形条件で実験を行った。幅10μm、高さ5μmの溝をナノ精度レベルで創成することができた。 この研究より、非球面ガラスレンズと微細形状構造の成形に成功した。高温プレス成形によって、これらのガラス製品を高精度、低コストで創成できるようになり、産業に役立つと考えられる。
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