これまで、本研究によってマールブルグウイルス株間のC型レクチン介在性細胞侵入効率は表面糖タンパク質GP上の547番目のアミノ酸によって決まり、このアミノ酸はC型レクチン介在性細胞侵入の際に、GPのcathepsin感受性を決める因子である可能性が示された。このアミノ酸の違いによるウイルス感染効率の差は、C型レクチンを強制発現させた細胞でのみ観察され、マールブルグウイルスのC型レクチン介在性細胞侵入では、本来の細胞侵入機構と異なる仕組みによってウイルスの細胞侵入効率が制御されているかもしれない。 フィロウイルスは通常、GP上のレセプター結合領域と細胞表面の未同定の宿主因子との結合によって細胞に吸着し、細胞内に侵入すると考えられる。一方で、C型レクチンはGP上の糖鎖を認識するため、レセプター結合領域以外の領域とも結合できる。そこで、本研究では、レセプター結合領域に変異を加えてその機能を欠損させ、C型レクチン介在性の細胞侵入が起きるかどうかを検討した。レセプター結合領域に変異を加えたGPをまとったシュードタイプウイルスは、野生型GPを持つウイルスが効率良く感染するVero細胞などへの感染性が低下した。さらに、C型レクチン強制発現細胞においても、これらの変異GPを持つウイルスの感染性は同様に低下し、C型レクチンの存在により感染性が回復することはなかった。したがって、C型レクチンとGPとの結合はフィロウイルス感染を担うことはできず、その役割は限定的であると考えられる。
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