高等生物は複雑な構造をもつが、それらは全て受精卵という単一細胞に由来する。高等植物の受精卵は高度な細胞極性をもち、その不等分裂によって異なる発生運命をもつ娘細胞を生じる。この際の軸性は成熟体の頂端-基部軸に相当するが、初期発生の過程で体軸が形成される仕組みについては現在でもほとんど分かっていない。 シロイヌナズナのホメオボックス型転写因子をコードするWOX8(WUSCHEL RELATED HOMEOBOX8)遺伝子は受精卵で発現し、その不等分裂後には一方の基部側の娘細胞にのみ発現が受け継がれる。我々は、このようなWOX8の非対称発現を制御する複数のcis配列を同定し、それぞれに特異的に結合する因子を探索した。酵母oneハイブリッド法によるスクリーニングの結果、各cis配列に特異的に結合する転写因子の同定に成功し、これら転写因子群がWOX8発現のみならず、受精卵の細胞極性や初期胚の体軸形成に重要であることを見出した。 現在までに酵母twoハイブリッド法によるスクリーニングをおこない、上記の転写因子群が胚に特異的な複合体を形成して働くこと、および受精後に特異的なタンパク質調節を受けることを示唆する結果を得ている。また、これら転写因子の変異体において、受精卵を蛍光マーカーで可視化し、単離して大規模発現解析をおこなうことで、これらの下流で体軸形成を担う実働因子の網羅的な探索を進めている。
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