研究課題
本年度の研究では、乳酸(LA)ユニットとヒドロキシブタン酸(HB)ユニットからなるP(LA-co-3HB)共重合ポリマーの大腸菌における生合成を成し遂げた。本ポリマーの微生物合成は、世界初であり、学術的な意義の他に、新聞やウェブ上の日経バイオニュースで紹介され、社会的にもPLAの微生物合成へのポテンシャルを示している成果として注目を集めた。具体的には、乳酸ユニットの前駆体であるラクチル(LA)CoAを重合できるLA重合酵素を選定するために、モノマーであるLA-CoAとHB-CoAを供給したインビトロ実験系において、様々な精製重合酵素によるポリマーの合成試験を行い、世界で初めてLA重合酵素を発見することができた。見出されたLA重合酵素遺伝子と、LA-CoA供給酵素およびHB-CoA供給酵素遺伝子を組み換え大腸菌で共発現し、ポリマーを合成したところ、NMR分析により合成されたポリマーが6mol%のLAユニットが導入されたP(LA-co-HB)であることを明らかにした。さらに、嫌気条件で組み換え大腸菌を培養することにより、乳酸の合成量を増やして、LA-CoAの供給量増加を促し、ポリマー中のLAユニット分率を47mol%にまで上昇させることができた。これら合成された様々なLAユニット分率を持つポリマーの熱的性質を測定したところ、LAユニットが導入されたことにより、これまでの微生物が合成するバイオプラスチックでは見られなかった新規の熱的性質を持つポリマーを微生物合成することができた。本研究成果によって、バイオプロセスで合成可能なバイオプラスチックの構造的および物性の多様性を広げることができ、その応用範囲の拡大に貢献することができた。
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Biomacromolecules (印刷中)
Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America 105
ページ: 17323-17327