研究概要 |
本特別研究員は、海洋産ポリ環状エーテルであるイェッソトキシンとシガトキシンを標的分子として、合成研究を行っている。この研究で明らかになった合成上の問題点を解決し、効率的な合成ルートを確立するのが目的である。ポリ環状エーテルの効率的な全合成を達成するためには、分子をいくつかのセグメントに分割し、それぞれを連結することで収束的合成を行うのが定石である。そこで、基本戦略として当研究室で開発した鍵反応、すなわちルイス酸による分子内アリル化反応とルテニウム触媒による閉環メタセシスを用いるセグメント連結法を用いて合成研究を進めることとした。 本年度は、シガトキシンの全合成研究の一環としてE-H環部の合成を行った。まずE環部とH環部をエステル縮合により連結した後、数段階を経て環化前駆体への変換を試みた。しかし、反応はうまく進行せず、環化前駆体を得ることはできなかった。種々条件検討を行ったが環化前駆体は全く得られなかった。そこで合成ルートを変更することとした。すなわち、E環部アルコールとH環部α-クロロスルフィドとの連結を行い、その後、数段階の変換を行い環化前駆体であるO,S-アセタールを合成した。このものに対しルイス酸としてAgOTfを作用させたところ、分子内アリル化が進行し、G環を構築することができた。今後、さらなる変換を行い、閉環メタセシスによりF環を構築することでシガトキシンE-H環部の合成を行う予定である。
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