本特別研究員は、海洋産ポリ環状エーテルであるシガトキシンCTX3Cを標的分子として合成研究を行っている。この研究で明らかになった合成上の問題点を解決し、効率的な合成ルートを確立するのが目的である。ポリ環状エーテルの効率的な全合成を達成するためには、分子をいくつかのセグメントに分割し、それぞれを連結することで収束的合成を行うのが定石である。そこで、基本戦略として当研究室で開発した鍵反応、すなわちルイス酸による分子内アリル化反応とルテニウム触媒による閉環メタセシスを用いるセグメント連結法を用いて合成研究を進める。 本年度はシガトキシンCTX3Cの全合成研究の一環として、A-E環部とH-M環部の連結のモデル実験に相当するBFGH環部の合成を行った。まず8員環骨格を有するE環部の合成では、D-グルコースから誘導したジオールに対し酸化開裂を行い、環化前駆体となる不飽和アルデヒドを調製した。続いてこのものに対しルイス酸を作用させたところ、分子内アリル化が高収率で進行し、環化体を単一の異性体として得ることができた。その後、数段階の変換によりE環部を合成した。合成したE環部は、別途合成したH環部とエステル縮合により連結した後、数段階を経て環化前駆体へと誘導した。このものに対する分子内アリル化について検討した結果、溶媒にCH_3CN-CH_2Cl_2の混合溶媒を用い、ルイス酸としてBF_3・OEt_2を作用させることで環化体を単一の異性体として得ることに成功した。その後、ルテニウム触媒による閉環メタセシスによってF環を構築することで、目的とするEFGH環部の収束的合成を達成した。本研究から得られた知見を基に、A-E環部とH-M環部の連結を行い、シガトキシンCTX3Cの全合成へと展開することができる。
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