東アフリカにおけるこれまでの研究から、作物に利用されることなく大量の窒素が溶脱することが明らかになっている。この、従来溶脱していた窒素を作物生育の向上に利用できれば、当地域が抱える食糧不足を解決する一助となることが期待される。そこで本研究では、有機物施用により土壌微生物の持つ生態を利用することで、溶脱していた窒素を作物生育に利用する手法の構築を目指。今年度は、有機物施用が土壌微生物の養分吸収/放出機構に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、2008年3月〜7月にかけて、タンザユア共和国・ソコイネ農業大学内圃場においてトウモロコシ栽培試験を行い、有機物施用に伴う土壌微生物中の窒素量の変動を解析した。得られた結果は以下の通りである。 (1)有機物施用に伴って、作物生育期間中に土壌微生物が保持する窒素量が有意に増加すること、またこの影響は施用後1ヶ月以内が特に顕著であること。 (2)(1)の結果、有機物施用により、土壌微生物を一時的に増殖させることで、窒素を一時的に微生物体内に貯留できること。 以上の結果から、東アフリカの農業において深刻な問題となっている生育初期中の窒素の溶脱は、播種の前に有機物施用を行い土壌微生物の養分吸収機構を用いることで軽減できることが示された。来年度は、適切な有機物施用量を決定するため、施用量を異にした圃場での栽培実験を行い、土壌微生物を利用した効率的な養分動態を実現するための適切な有機物施用技術の構築を目指す。
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