1、先天性多発奇形症例の染色体微細構造異常解析 集積された先天性多発奇形33例をSNPタイピングアレー(Affymetrix社GeneChip Genome-Wide Human SNP array 6.0)を用いて、染色体のコピー数異常を網羅的に解析した。染色体微細構造異常が疑われる部位は、さらにFISH法により検証を行った。その結果、不均衡型転座3例・欠失7例・重複1例の染色体微細構造異常を同定した。得られた構造異常とその症例の臨床症状から、疾患の原因となりうる候補責任遺伝子を検討中である。原因遺伝子の単離は、発症機構やタンパク質の機能解明などにつながる貴重な情報である。 2、転座を伴った症例の転座切断点解析 (1)、均衡型転座を呈したWest症候群症例の切断点解析 常染色体とX染色体の均衡型転座を呈したWest症候群症例の転座切断点解析を行った。Xp22.13と18p11.23の転座切断点をクローニングし塩基レベルで決定した。転座によってCDKL5遺伝子(染色体X)とPTPRM遺伝子(染色体18)の断裂を確認した。本症例は、染色体異常によるCDKL5の断裂で生じたWest症候群の世界で第3例目である。 (2)、染色体転座を伴った早発性卵巣機能不全の切断点解析 X染色体を含む均衡型転座を有する早発性卵巣機能不全(POF:Premature Ovarian Failure)4例を集積し、転座切断点の解析を行っている。1例は塩基レベルで転座切断点を決定し、ある興味深い遺伝子の断裂を確認している。転座によって生じたこの遺伝子の断裂は、POFの発生に大きく関わっていると予想されるため、他のPOF患者検体で変異解析を行う予定である。また残り3例においても転座点のクローニングに向けFISHあるいはサザンプロッティング等が進行している。
|