研究概要 |
今年度は研究計画に沿い,大学附属の相談機関,児童相談所,児童養護施設等と連携し,心理臨床的援助が必要な児童・生徒の臨床実践・臨床研究を行うとともに,以下の2点について検討を行った。1.小学校5年生〜高校2年生までの1508名を対象とした質間紙調査から,不快情動への統制感の測定方法を開発し,その発達的変化を抽出した。 思春期の"不快情動への統制感尺度"として,表情図版を用い作成した尺度項目への回答を求めた。因子分析の結果から,新たに"不快情動への拒否感"因子,"不快情動の切りかえ可能性"因子の2因子構造が確認された。またストレスコーピング尺度,情動・ストレス反応尺度を実施し,不快情助への統制感得点が影響を与えるという仮説について,構造方程式モデリングによる検討を行った。結果から,不快情動の拒否感は,サポート希求や問題解決を促進する一方で,ストレス反応の増大に結びつく情動的回避も促進することが示された。不快情動の切りかえ可能性についても,サポート希求や問題解決を促進するが回避的対処を抑制し,ストレス反応の抑制に影響することが示された。この結果については「心理臨床学研究」に現在投稿中である。2.小学校6年生〜高校2年生までの727名を対象とした臨床動作法に基づくストレスマネジメント教育を実践し,その結果と不快情動への統制感との関連について,質問紙および自由記述から検討を行った。結果から,臨床動作法の有効性が示され,小学生では動作か大中の自体の動作への気づきが高く,認知・身体的反応を低下させる傾向が示された。中学生・高校生では,援助者への気づきが芽生えるとともに,弛緩感・爽快感が自覚的なストレスの低下に影響する等の結果が示された。次年度は不快情動への態度との関連についてさらに詳細に検討し成果を発表するとともに,臨床事例への適用について検討してゆきたい。
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